わたしたちの周りには、たくさんの美しい色があふれています。
花畑の黄色や赤色に紫色、大空の青色、草原の緑色・・・。私たちの身の回りのもの、部屋の中、身につける服にも、さまざまな色が取り入れられています。
多くの子どもたちは、色を見ると、とても喜びます。クレヨンが近くにあれば、それを手に取って、紙や、床、テーブル、壁にまで、色をぬるのを楽しむでしょう。
もし可能であれば、水で溶いた水彩絵具に平筆をひたし、たっぷりと絵具をしみこませて、予め水を含ませた大きな画用紙に色を拡げてみてください。
色は、水性の状態の時に、色の輝き、光、力など、色彩の本領を最も美しく現すといわれています。
色が水に溶けると、重みや、堅さ、材質感を失います。
小さな子どもたちは、まるでその色彩の本質を知っているかのように、液体状の絵具が入った小鉢に平筆をひたし、絵具をしみこませて、真っ白な画用紙一面に色をひろげるぬらし絵を楽しみます。
力強い色の輝き、そして、それをなんともいえない美しい表情で眺める子どもたちの様子に、ハッとさせられます。
ぬらし絵を通して、私たちは、さまざまな色との出会い方をします。
ある日のぬらし絵の時間のこと。
絵筆が子どもの手に渡り、キラキラと輝く黄色の服を纏って(黄色の絵具をつけて)、お散歩にでかけました。画用紙の上に招き入れると、その子は、大きく息を吸って、筆をゆっくりと動かし始めました。
その子は、色が静かに広がっていく様子をしばらくながめた後、筆をギュッとにぎり、今度は赤い絵の具を纏った筆で、大きな点を描き始めました。黄色と赤が混じり合い、元気一杯の橙色が生まれました。
「みかんができた!ほらここにも、あそこにも!みんな見て見て!」
橙色の絵具がはじけて、気持ちよく飛び散り、その子もとっても楽しそうに満面の笑みを浮かべていました。
その後、青色をたっぷり含ませた筆を手に取って、気持ち良さそうに、円を描くようにぐるぐると大きく筆を動かしていました。
できあがった絵は様々な色調の茶色になっていましたが、その子の筆の動きと色が刻一刻と変化していく様子は、内的な躍動を私にたっぷりと与えてくれました。
「色は子どもたちに語りかけます。色の世界から受けとった感情は、魂を形成するように働くのです。」
シュタイナーの言葉が伝えているように、ぬらし絵を通して、私たちは一つ一つの色と出会い、色そのものを味わい、心の栄養をもらっているのですね。