占星術における惑星(Planet)
太陽の周りを回る一定質量以上の天体のことを惑星(Planet)と呼びますが、占星術では、太陽・月も含めた10天体(太陽・月・水星・金星・火星・木星・土星・天王星・海王星・冥王星)を惑星として扱っています。
惑星は、私たちの心のさまざまな働きや原理を表していると考えられています。一つひとつの惑星は、それぞれ担当する領域があり、先に挙げた10個の惑星は、全体として人間の心を構成していると言われています。以下、それぞれの天体を見ていきたいと思います。
個人天体:個人的な影響を与える天体
太陽 ☉
太陽は、惑星が構成する太陽系の中心で、出生図の各惑星は、太陽のエネルギーに統合されて表現されます。この太陽が表すのは、私たちの心の中心であり、心全体を統合し、あたためる力です。この力が外側に表現されると、意識や意志、活力、父性、根本のアイデンティティなどとなって現れます。太陽が生命に必要なエネルギーを供給していることから、心理的にも自分を動かすエネルギー(原動力)として捉えることができます。個人のホロスコープで太陽が位置しているサインは、その個人の最も重要な特性、本質的な個性と原動力、意識的な目標、生きる上での道を表しています。太陽は、温かさを放ち、吸引力や存在感、活力を持つ獅子座のサインの支配星です。
月 ☽
月は地球に最も近い天体で、満ち欠けを繰り返し高度や距離なども変え、複雑なリズムを持って変化します。太陽の光を受けて輝いている月は、真の自我である太陽の代理、この地上世界における日常的自我と言えます。月は、私たちの心の中では、情動パターンや行動パターン、無意識的な態度、感情や感受性、習慣の象徴です。月は、誕生のプロセスや体内の生理的作用とも関係し、私たちの過去に対する態度についても語ります。月のサインは、自分の感情や行動パターンといった心の働きの特性を示しています。月は、内なる空間を形成する蟹座のサインの支配星です。
水星 ☿
水星は太陽の最も近くに位置し、すばやく動きながら、太陽の仲介者の役割を果たしています。水星は、私たちの思考、情報処理能力、伝達、柔軟さ、器用さ、整理整頓、言語能力の象徴です。出生図において水星があるサインは、その人の思考パターンや他者とどのように意思疎通するのかを示しています。水星があるハウスは、何を最も考え、他者に語るかを示しています。また水星は、地球から見ると、百合の3弁と3弁からなる花びらのような形を描きながら回転しています(図1−1、図1ー2)。その螺旋の形は、物事を整えるように作用していると言われています。水星は、敏捷性とコミュニケーションによって双子座を支配し、物事を整える力や器用さから乙女座も支配しています。
金星 ♀
金星は、宵の明星や明けの明星として輝き、およそ8年で5つのループを描き、美しく調和の取れた、薔薇の5弁の花びらのような星型を描きます(図2)。占星術において金星は愛や美、創造性や芸術的才能を象徴し、対人関係における魅力や感情表現、そして美的感性や調和の感覚に影響すると考えられています。金星があるサインは、愛や感情を相手にどのような方法で表現するかを示します。金星があるハウスは、芸術的な才能を表現する分野や美を体験する場所を示します。金星は、形成することに関わる牡牛座や天秤座を支配しています。
火星 ♂
火星は、太陽系の中では地球の外に位置する惑星の一つです。赤っぽい特徴的な色を持ち、ダイナミックな動きをします。火星が動く軌跡は、とても躍動的で、不規則です(図3)。火星は、自己主張する能力、行動力、競争心、性的欲求などを象徴しています。肉体的なエネルギーとして表現されることも多く、スポーツやその他の肉体的表現にも影響します。火星のエネルギーが妨げられると、怒り、炎症、事故となって現れることがあります。火星があるサインは、そのサインの傾向に応じて、より内的に、あるいは外的に火星のエネルギーが表現されます。火星のハウスの位置は、最も活動的な人生の領域を示し、肉体的に困難を抱えてしまうこともあるでしょう。火星は、先駆者的なサインである牡羊座の支配星です。
社会天体:より社会全般に影響を与える天体
木星 ♃
木星は、太陽系の中では、最も大きな惑星で、堂々とした動きをしています。太陽が黄道を1周するのに12ヶ月かかるのに対し、木星はおよそ12年かかります。木星は、拡大と成長、長期的目標、哲学、社会的意識の象徴です。心理的には、木星は道徳的価値観、真理や生きる意味の探求を表しています。占星術では木星は幸運や報酬の象徴とされており、木星があるサインは、成長する方向性や方法を示してくれます。木星が位置するハウスは、人が成熟しようとする人生の領域を表し、木星はその領域での経験の幅を広げることを助けてくれます。太陽が外側の世界を活気づけるように、木星は内側の世界、思考の世界を活気づけます。木星は、高みと遠くの目標を目指し、思考のサインである射手座の支配星です。また精神性や霊性に関わる魚座の支配星でもあります。
土星 ♄
土星は、目に見える惑星の中では最も遠くにあり、太陽の周りを30年ほどかけてゆったりと巡っています。周囲に大きなを輪をもち、自らを抑圧しているかのように見えます。土星は、忍耐力、痛みを通しての学び、現実感、構造と制限、規則や組織化の力を表しています。長期的な目標、成熟した判断力や野心の象徴として捉えることができます。土星があるサインは、制限や規律を与えられます。土星のハウスの位置は、人生の領域で、制限が厳しく見える場所や規律が最も要求される場所を表しています。土星は、組織化に優れ、重要なことを達成しようとする山羊座のサインの支配星です。
時代天体:時代そのものに影響を与える天体
天王星 ♅
天王星は、黄道帯をおよそ84年かけて周ります(各サインに平均して7年ほど留まります)。一つのサインに滞在する期間は一つの世代に当たりますので、サインの影響は世代的なもので、個人的なものではありません。天王星は、1オクターブ高い水星(変容した思考)を表し、古い限界と枠組みを打ち破り、自由な空間を創造し、新しい次元に到達しようとします。天王星は、独特の個性や、独立と自由を求める心や革新の象徴で、他の天体の表現を激しくする働きがあります。天王星があるハウスは、自由を必要とする人生の領域、あるいは突然の驚きを体験するかもしれない領域を表します。天王星は、自由を求め、革新的な水瓶座の支配星です。
海王星 ♆
海王星は、黄道帯を164年ほどかけて巡ります(一つのサインに平均して13〜14年ほど留まります)。海王星は、1オクターブ高い金星(変容した感情)と言われ、共感力によって一体化する傾向があります。海王星は、人間間の精神的な結びつきを求め、インスピレーション、想像力や直感を象徴しています。根源的な源泉に触れることで個人の枠組みを超えた、全体との一体感を可能にします。精神的探求や芸術的な感性に強く影響し、神秘体験を可能にする一方で、日常生活から逃れ、幻想への逃避につながることもあります。海王星のハウスの配置は、理想化したり、幻想化する人生の領域を表しています。海王星は、自分の周りと一つになりたいと思っている魚座の支配星です。
冥王星 ♇
冥王星は、黄道帯を248年ほどかけて周ります(一つのサインに平均して20年ほど留まります)。冥王星は、1オクターブ高い火星(変容した意思)と言われています。死と再生の原型、現実の崩壊、意識と存在の変容、変化の力を表します。深層心理の理解、権力を用いることや影響力、そして隠された力の象徴でもあります。冥王星のハウスの配置は、最大の変化や強力な発達の源泉になりうる人生の領域を示しています。冥王星は、痛みの限界を探ろうとする蠍座の支配星です。
まとめ:惑星の意味するもの
占星術において惑星は人間のさまざまな心の働きを表します。惑星が位置するサインの資質によって現れ方が異なり、ハウスの領域において活性化されます。さらに他の惑星との相互作用(アスペクト)によって表現が変わります。私たちが人生を通して変化し続けるように、出生図の天体の表現も変化していきます。私たちの出生図の天体について知ることは、私たちが人生において目指す方向を示す手助けになると思います。