冬の夜空を見上げると、南にオリオン座が輝いています。その右上に位置する星たちが牡牛座です。真ん中にアルデバラン(Aldebaran)という一等星の恒星があります。その左隣に位置しているのが、双子座の星たちです。ポルックス(Pollux)は、ふたご座で最も明るい恒星で、隣のカストルとともに、ふたご座の兄弟の頭に見立てられています。一方、夏の夜空の南には、さそり座や射手座が輝いています。
太陽は、四季の移り変わりとともに、星座の前を動いていきます。太陽が一年を通して天球上を移動していく黄道(こうどう)を中心とする帯状の領域が黄道帯と言われています。黄道帯には動物をかたどる星座が多く存在することから、獣帯(じゅうたい)という別名があります。その獣帯に位置しているのが、牡羊座(♈︎)、牡牛座(♉︎)、双子座(♊︎)、蟹座(♋︎)、獅子座(♌︎)、乙女座(♍︎)、天秤座(♎︎)、蠍座(♏︎)、射手座(♐︎)、山羊座(♑︎)、水瓶座(♒︎)、魚座(♓︎)という黄道十二星座(12 ecliptical constellations)なのです。
西洋占星術では、黄道帯は12に分割され、それぞれが30度の幅を持っています。その分割の起点は、太陽が春分の日に位置する黄道上の点(春分点)とされています。そして、12に分割されたそれぞれを黄道十二宮(Zodiac signs, ゾディアック・サイン)と呼んでいます。サインは「宮」とも呼ばれています。
それらの呼び名は、黄道帯上に並んでいる12の星座に由来します。太陽はおよそ1年かけて黄道帯を構成する12のサインを巡り、それぞれのサインに一月ほど留まります。
占星術におけるサインの呼び名は、夜空に輝く黄道十二星座からとられていますが、サインの位置とそれぞれに対応する星座の位置にはずれがあります。上の図からもわかるように、12のサインのそれぞれの大きさは同じですが、12の星座の大きさは、それぞれ異なります。さらに、12のサインの起点である春分点(牡羊座0度)が、72年に1度の速さで、黄道上を東から西に向かって動いています。そのため、占星術で12のサインの始まりをどこに置くかについては、トロピカル方式*やサイデリアル方式**があります。現代の西洋占星術では主にトロピカル方式が採用されています。
星座の原型は、紀元前3000年ごろのメソポタミア地方(現在のイラク付近)で羊飼いたちが星空を眺めて描いた星々の集まりだとされています。彼らは、目立つ星や星の並びに名前をつけて、動物や英雄、神様、生き物などの姿に見立てました。この星座は、メソポタミア地方に住んでいたシュメール人やアッカド人が神話や伝説の英雄や神様、生き物にみたてたことから始まりました。その後、メソポタミア地方に住んだバビロニア人に受け継がれました。
西洋占星術の起源は、バビロニアにありました。バビロニアでは、紀元前2000年紀に天の星々と神々を結びつけることが行われました。その後、周辺の地域に広がり、ギリシャに辿り着きました。12の星座を実際の星座にちなんで命名し、太陽の軌道との位置関係に基づき、特定の日付と結び付けたのは古代ギリシャ人なのだそうです。
黄道十二宮を意味する「zodiac(ゾディアック)」は、ギリシャ語で「動物の輪」という意味を持つ「zōdiakos kyklos(ゾディアコス・キクロス)」に由来します。古代ギリシャでの星を使った占いは神々とつながるために使用され、神々と話をするための儀式だったようです。やがて、天の事象を解釈するバビロニアの占星術はギリシャの占いと融合し、より個人的な星占いの誕生につながります。
エジプトのアレクサンドリアで、占星術師兼天文学者だったクラウディオス・プトレマイオスは著書『テトラビブロス』で西洋占星術の基礎を築き、占星術の解釈の個人的な側面を強調しました。個人の星占い、つまり、星を読み解くことで、自分の人生について知ることができるという考え方が始まりました。
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*トロピカル方式では、太陽の通り道である黄道と天の赤道の2つの交点のうち昇交点を牡羊座の0度(春分点)としています。そこを太陽が通過した瞬間が春分となります。地球の四季と連動。
**サイデリアル方式では、ある恒星の位置を牡羊座の0度に定めました。その後、地球の歳差運動(約25,800年周期)により、その位置は72年に約1度ずつ西へ移動することが判明。現在その暦は位置の計算方法により数種類あるとのこと。インド占星術ではサイデリアル方式を採用。